認知症検査は『認知症の症状を調べる方法』と『その原因となる病気を調べる方法』、大きく分けて2つの方法があります。

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『認知症の症状を調べる方法』として、問診、行動の観察、心理検査などがあげられます。

「認知症の症状が確かにあるらしい」となった場合、その原因となる病気の診断をするための検査も必要となります。

『その原因となる病気を調べる方法』は、脳の画像検査(MRIやCT)、血液検査、尿検査、脳波検査、そのほか様々な検査が行われます。

認知症の診断評価について

アルツハイマー病と診断されたからと云って直ぐに認知症になるということではありません。
レビー小体病、前頭側頭変性症 脳梗塞 脳内出血などの病気はそれがあっても認知症になる人もいれば認知症にならない人もいます。

認知症とは
一旦発達した精神機能の複数の機能が低下して家庭生活や社会生活に支障が出てくる事をいいます。

かつては、認知機能障害の症状が出ていたとしても、早期に受診される方はいなかった為、認知機能の低下で受診される方は必ず認知症でした。

しかし現在では、アルツハイマー病だけど認知症の症状ではないという方が沢山います。

その方の症状が”認知症というべきレベル”なのか、あるいは”軽度認知障害というレベル”なのか、また、”正常と区別がつかないレベル”なのかという事を判断するためには、実生活に対する情報がとても重要です。

よって、同居家族の方から見た、ご本人の日頃の行動などの情報は医師が診断する際の鍵となります。

次に、心理検査も認知症の診断に用いられます。
ただし、心理検査に関して注意しておくべきポイントは、『心理検査の成績が低い人でも生活できる』もしくは『心理検査の成績が低い人でも生活できる環境がある』、というところです。

例えば、隠居した農家の方で「草取りだけしていればよい」という生活環境であった場合、多少物忘れがあったとしても
その人に高い薬を飲ませてまで、認知症という診断をする必要はありません。

一方で、一家の大黒柱の方が能力が高いが「この頃仕事が上手にできない」その原因がアルツハイマー病における軽度の障害であるらしいというのであれば、これは認知症と診断せざるを得ないのです。

そういった生活環境なども認知症と診断する上で必要な情報となります。

基本的な身体検査(健康診断で行うような検査)

血液検査、尿検査、心電図検査、胸部レントゲン検査、
栄養障害による認知症の診断には これだけで役に立つ事があります。

アルコール性の認知症などは、ある種のビタミンが低下する為に急激に認知症の症状が起こる事からそのビタミンを補給すれば治るというケースがあります。あるいは甲状腺ホルモンのようなホルモンの代謝のバランスが崩れた時に起こる認知症があります。ホルモンを薬で調整してあげれば症状が軽減します。
感染症による認知症も血液検査で分かります。(例えば梅毒、エイズ その他の脳炎など)

循環器障害や呼吸器障害による認知症と診断された場合、低酸素脳症や重度の睡眠時無呼吸症候群などで脳が障害されているなど。これらの検査でそれを明らかにすることができます。

糖尿病や高血圧のように脳の血管障害のリスクを高める病気がある場合、その進行具合を血液検査によって明らかにすることで脳血管性認知症の診断もしくは進行しないように治療していく場合に重要な情報を与えてくれます。

心理検査

心理検査は認知症の原因となる病気を診断するため、あるいはその病気がどれくらい進行しているのかを診る場合にも重要です。

心理検査の結果は、認知症の原因になる病気によって異なってきます。特に軽度の場合は差が著しく現れます。アルツハイマー病認知症の場合は記憶障害や見当識障害が早い時期から起こり、

レビー小体型認知症では視覚認知の障害が起こってきます。
目が見えていないのではなくが見えているがその見える情報が頭の中でキチンと解釈できないということが起こるのです。

また前頭側頭型認知症では記憶障害やその他の認知機能障害が目立たないという特徴があり、心理検査の成績はとても良いが、行動じたいは、これまでのこの人とは思えないような無責任さであるという風な時に診断の補助になります。

心理検査は、ひとつの心理検査で全ての障害を明らかにすることはできません。いくつかの種類の心理検査を組み合わせて行います。

  • スクリーニング検査:簡単な認知症テスト(長谷川式認知症スケール・NNSEなど)
  • コグニスタット検査:精神機能を少し分析できる検査(見当識 注意 語り 理解 復唱 呼称 構成 記憶 計算 類似 判断など)
  • ファブ:前頭前野の機能をみる検査

この心理検査はアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症や前頭側頭型認知症などを見分ける為に行う検査です。

心理検査はご本人にとって負担になります。「できなかった」っという事に直面させられる事から、人によってはとても傷つきます。そして、約30分~60分と時間もかかり、高齢者の方にとってそれがとても負担に感じられる事があります。心理検査はただ闇雲にやれば良いというものではなく、医師の指導の元すすめていく必要があるといえます。

 

画像検査

脳の画像検査は。『形態画像(脳の形と血管の状態を見る検査)』『機能画像(神経細胞の生きている状態を診る検査)』大きく分けて二つあります。

形態画像(脳の形を見る検査):CT、MRI/(血管の状態を診る検査):MRA

これらの検査は脳の萎縮や血管の状態を診るのに優れており、海馬の萎縮はアルツハイマー型認知症に特徴的であり、前頭側頭葉の萎縮は前頭側頭型認知症の診断に役立ちます。血管障害があれば、脳血管性認知症と診断されます。そして、MRAは脳血管障害のリスクを診ることができます。

※CTとMRIはともに脳の形を見る検査となりますが、CTとMRIはそれぞれ得意分野があるため、両方の検査が必要になります。

機能画像(神経細胞の生きている状態を診る検査):スペクト、ペット、ファンクショナルMRI

機能画像は、脳の萎縮が起こる前に脳の血流や細胞の代謝の低下を診る検査です。

CTやMRIで脳の萎縮が確認される時は、既に神経の細胞が死んでしまった状態です。

しかし認知症の始まりは、そうした脳の委縮は起こっていないが、細胞の活動が悪くなり死にかけている状態という事もあり、CTやMRIでそれを見つけることが難しくなります。

アルツハイマー型認知症やその他の認知症は特徴的に障害される部位があり、たとえ萎縮がないとしても、脳の血流が低下していれば、その部位の病気の可能性が疑われるという事がいえます。

例えばレビー小体型認知症の場合は多少進行していてもCTやMRI上は、アルツハイマー型認知症で起こる様な海馬の萎縮などという目立った症状が出てこないが、スペクトをとると後頭葉の血流が低下するという特徴的な症状があります。

病院の検査方法を確認する

大学病院などは形態画像機能画像を始めから撮る場合が殆どですが、すべて撮るということは患者の自己負担が多くなり、時間もかかる事になります。

病院によって形態画像検査をとり、原因が特定できな時は機能画像を撮るというところもあるため、その病院の検査方法を確認した上で検査に望まれるとよいでしょう。

その他の検査について

その他にも診断を裏付ける為に必要に応じて行う検査があります。

MIBG心筋シンチグラフィー(心臓の筋肉を見る検査)

レビー小体型認知症は交感神経終末から放出される神経伝達物質(ドーパミン)の集積が低下するという特徴があることから、レビー小体型認知症の診断を裏付けます。

ダットスキャン

ダットスキャンもレビー小体型認知症の診断を裏付ける検査で、脳の神経伝達物質(ドーパミン)の集積の働きを診る事ができます。

脳波の検査

脳波の検査は、正常な細胞の活動状態を確認するための検査です。認知症についての病気の診断をするというより脳の神経の細胞がどれぼど働いているのかどうかを見るために必要な検査です。

髄液の検査

脳脊髄液を背中の脊椎骨の間に針を刺し脳脊髄液を取り出します。
最もそれが必要とされるのが、脳炎や感染症の場合、確定診断に脳脊髄液が必要です。

これは、治療によって治る可能性があるため、多少の犠牲を払ってでもやらなければいけない検査です。これをせずに脳炎を放置したが為に治る病気が治らなくなるという場合もあるからです。

アルツハイマー病認知症がせき髄液の検査で早期発見できる?として注目を集めている。

現在、アルツハイマー病は『心理検査』『問診』『画像検査』「行動観察』などによって、ようやく診断する病気であるが、

米国ロックフェラー大学らの研究グループは、2015年3月16日、血液検査によってアルツハイマー病の早期診断ができる可能性があるとの論文を、米国科学アカデミー紀要で報告した。

脳脊髄液の中からアルツハイマー病の原因とされている物質「アミロイドベータ」の濃度を測るという方法である

この方法が確立されれば、ご本人の心理的身体的負担だけではなく診断する側にもとてもやりやすくなります。

遺伝子の検査

遺伝性のアルツハイマー病あるいは、遺伝子に異常があることで発症するハンチントン病の様に、元々遺伝するという病気については遺伝子の検査をすることがあります。

ハンチントン病は優性遺伝の病気であるため、両親のどちらかが同じ病気であることがほとんどです。仮に、片方の親にハンチントン病だった場合、50%の確率で子どもに遺伝します。また、父親からの遺伝の場合は、子どもの発症年齢が早くなり、症状が重くなる傾向があります。

 

まとめ

認知症の検査は認知症の程度をみる検査認知症の原因となっている病気を特定する為の検査の2種類があります。疑われる病気が異なれば、検査も異なります。

認知症だからみんな同じ検査をするという訳ではありません。

検査というのはお金もかかり患者さんに対する心理的身体的負担が大きくなります。始めからすべての検査をするのではなくて、診断がつくまで必要な検査を一つずつ積み上げていくことがよいのではないでしょうか。

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