認知症は心の病気ではなく、脳の病気です!

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認知症はぼんやりしたり、無気力になったり、体験したことをすっかり忘れてしまう症状で、心の病気のように感じますが、実は「脳の病気」です。認知症事態は病名ではありません。

何らかの原因で脳がダメージを受け、ダメージを受けた脳の場所によって症状が変わりますが、『記憶』『考え』『言葉を発する』『物事を順序だてて実行する』といった知的能力が著しく低下し、やがて日常生活が困難になっていきます。
何らかの原因とは、
認知症の7割をしめる『アルツハイマー病』その次に多いのが『血管性認知症』、その他にも、『レビー小体型』『前頭側頭型』などが上げられます。

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認知症の主な病名(種類)

アルツハイマー病とは

日本人に多くみられるアルツハイマー病は脳に黒いシミのような老人班や糸くず状の老廃物が溜まり、細胞の働きを弱めます。

アルツハイマー病は1906年にトイツのアロイス・アルツハイマーという精神科医が発見・発表した病気です。アルツハイマー病の原因は未だ解明されていませんが、アルツハイマー病にはいくつかの特有の病変がみられる事がわかっています。

ご存じの方が多いかと思いますがアルツハイマー病の脳には病的な萎縮が見られます。ヒトの脳は年齢とともに神経細胞が少しずつ減り30歳~80歳までの間に、脳の重さはおよそ100グラム軽くなると言われています。

ところがアルツハイマー病の方は発症から数年で100グラム減ってしまうのです。

アルツハイマー病患者の脳をさらに詳しく調べてみると、神経細胞の外側に「老人班(βアミロンド)」と呼ばれるシミが多くみられ、神経細胞の中には、「神経原線維変化(タウたんぱく)」と呼ばれる、たんぱく質が糸くず状に変化したものが見られます。

この2つが神経細胞の外側と内側を圧迫し破壊し、そして萎縮させます。やがて病変は広範囲に広がり、記憶をつかさどる海馬と呼ばれる部分をも死滅させ、脳組織は著しく萎縮します。

しかし、「老人班(βアミロンド)」も「神経原線維変化(タウたんぱく)」も認知症患者だけにみられるものではありません。アルツハイマー病の方はこれらのタンパク質が異常に増え広がるのです。

では、『アミロイドβ』がなぜ溜まるのか?

大部分は生活習慣が大きな関係である事が最近分かっています。

例えば、高血圧・糖尿病・脂質異常症などのコントロールが悪いと、認知症になりやすいと云われている。

認知症はひとだび発症してしまうと治す事が難しい病気です。現在のところ、この深刻な疾患に対する治療法はありません。

しかし、認知症の進行を抑えたり、脳の機能低下を遅らせる薬物療法がありますので、早期治療が必要です。

アルツハイマー病は徐々に進行する

アルツハイマー型認知症は、症状が出始める10年以上前に、すでに始まっているとみられます。

そのため初期の「物忘れ」や「しまったところを忘れる」などによる症状は「よくある事」と思い、気づきにくいのが現状です。

その後、症状が目立ち始める中期を経て、後期に至るまでの期間は4~6年、長い人では10年から20年以上かけてゆっくりと進行します。発病からの全経過の平均は8年といわれています。

脳血管性認知症

アルツハイマー病の次に多いのが脳血管障害です。脳梗塞(脳の血管が詰まり血流が悪くなる状態)や脳出血(脳の血管が破れ出血する状態)によって脳の記憶を司る部分が障害を受ける事で起こります。

脳血管性認知症とは

認知症を引き起こす原因のひとつ、脳血管トラブルには大きく分けて「脳梗塞」「脳出血」の2種類があります。

「脳こうそく」は脳の動脈硬化により血管が狭くなったり、血栓という血の固まりができて脳を詰まらせたりする病気です。また脳以外でできた血栓が血管を通り脳でつまる場合もあります。せき止められた血管に血液がとどこおり、その先の脳神経細胞に、血液に含まれる栄養や酸素が行き渡らず。脳神経細胞の働きが低下したり、死滅してしまう事もあります。

「脳出血」は、脳の血管が破れて出血し、血腫(けっしゅ)という血の固まりとなり、その部分の脳神経細胞が壊死(えし)してしまいます。出血する部分が脳の外側を覆う「くも膜下」で出血した場合はくも膜下出血という病名となります。

「脳梗塞」「脳出血」は脳に激しい痛みを伴い、それをきっかけに脳血管性認知症を発症する事が多いのですが、「無症候性脳梗塞」のように本人に自覚がなく、小さな脳梗塞や脳出血を何度も繰り返し徐々に認知症になる事があり、気づけば認知障害が進行しているケースもあります。

※壊れてしまった脳細胞の場所によって認知症の症状が様々です。

レビー小体病認知症

最近増えてきているのがレビー小体病です。脳の神経細胞に小体(異常なたんぱく質)が蓄積して起こる病気でパーキンソン病のように手足の震えや動作が緩慢(ゆっくり)になり、幻覚・幻視、尿失禁などの症状が現れます。

また、甲状腺機能低下や頭部外傷、腫瘍などのさまざまな病変によってひきおこされる認知症もあります。

レビー小体型認知症は、認知機能を司る大脳皮質の神経細胞のなかに「レビー小体」が蓄積し、脳の神経細胞が壊れて徐々に減っていく進行性の病気で、神経を上手く伝えられなくなり、認知症の症状が起こります。

「レビー小体」は、呼吸や血液の循環に携わる脳幹にもたくさん集まる事があります。脳幹に集まると筋肉のこわばりや歩行困難、手の震えなどパーキンソン病の症状が現れます。そして、「レビー小体」は

パーキンソン病特有のものであると考えられていたのですが1990年代の後半になって、認知症の患者の脳にも「レビー小体」がある事が知られるようになりました。

レビー小体型認知症の特徴的な症状

レビー小体型認知症の特徴的な症状は、実際に存在しないものが見えるという「幻視」です。もの忘れとともに「テーブルに知らない人が座っている」など非常に具体的でリアルな幻がみえるなど、被害妄想やうつ症状やパーキンソン症状をともなう事もあります。

これらの症状は日によって良くなったり悪くなったりと変動が見られますが進行は比較的速いといわれています。

 

前頭側頭型認知症(FTD)とは

「前頭側頭型認知症」とは、額(ひたい)のところにある『前頭葉』と両耳のところにある『側頭葉』のいずれかが、異常なたんぱく質(「ピック球・タウ蛋白・TDP-43・FUS)によってはたらきが低下し、死滅することで発症します。やがて『前頭葉』『側頭葉』の両方が萎縮してしまう病気です。

前頭側頭型認知症は、50代~60代とアルツハイマー病に比べて比較的若い方に多くみられるのが特徴です。

前頭側頭型認知症の症状

初期症状として、会話の理解力などの認知障害が軽い為、あるいは目立たないために周囲の方から「変な事をするようになった」と感じる事はあるが、認知症だと疑われる事は少ないでしょう!
また、行動について指摘されると悪い事だと理解はできているので、「謝罪したり」「行動をやめる」ことはできても、また同じ行動をとります。

前頭葉障害により性格の変化などの行動の変化が目立ち認知症と診断されず、社会生活が破綻し、家族に甚大な被害が及ぶなどの悲劇的事態もすくなくありません。
また2015年厚生労働省により「指定難病」のひとつに指定されています。

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